高次脳機能障害が残存した博士過程の大学院生の逸失利益につき,定年までは賃金センサスの1.4倍を,定年後67歳までは賃金センサスを算定基礎とした事例(H16.6.29東京地判)

2022-01-04

被害者は,国立大学薬学部大学院博士課程に在学中で,大手製薬会社の入社試験に合格して内定を得,H12.4には同社に入社することが確実であった。被害者は,学業優秀で,少なくても次長になる蓋然性は高いものと認められる。同社の賃金体系から考慮して,被害者の得られる蓋然性ある年収は,賃金センサスの大学卒男性労働者の平均年収額の約1.4倍と解される。そこで,入社時のH12.4(28歳)から,60歳までの32年間は賃金センサスの大学卒男性労働者の平均年収額の1.4倍を算定基礎とし,60歳から67歳までは賃金センサスの大卒男性労働者60歳から64歳までの平均年収を算定基礎とする。さらに,内定していた製薬会社からの奨学金と大学からの助成金も所得と認められ,逸失利益となる。