<弁護士交通事故裁判例>元本への充当合意があったとする主張を認めなかった事例

2017-10-06

加害者側は,少なくとも後遺障害による自賠責保険金は,不法行為時に元本に充当されたものと評価して損益相殺的な調整を行うことが幸平に適うというべきである旨主張するが,自賠責保険金によっててん補される損害については,本件事故時から自賠責保険金の支払日までの間
の遅延損害金が既に発生していたのであるから,自賠責保険金が支払時における損害賠償金の元本および遅延損害金の全部を消滅させるに足りないときは,遅延損害金の支払債務にまず充当されるべきであり,これは後遺障害による損害であっても異なるものであり,上記主張は採用することはできない。また,加害者側は,少なくとも損害賠償金の元本への黙示の充当合意があった旨主張するが,自賠責保険金の支払は,本件事故による身体障害から生じた損害賠償請求権全体を対象としており,自賠責保険会社が損害賠償額の支払に当たって算定した損害の内訳は支払額を算出するために示した便宜上の計算根拠に過ぎないことからすると,自賠責保険金支払いのための必要な所定の手続を行ったうえでその支払を受けたことのみをもって黙示の充当合意があったものと認めることはできない。

(東京地裁平成23年8月9日判決)