年少女子未就労者の逸失利益につき全年齢の全労働者平均賃金を基礎として算定した事例(H14.5.31大阪地判)

2021-07-12

被害者は,症状固定時は7歳で小学校2年生の女子である。同人は,後遺障害を残し,H11.4.19に症状が固定した。H11賃金センサスの男子労働者平均賃金は¥5,623,900-,同女子労働者平均賃金は¥3,453,500-である。賃金センサスは現在就労する労働者の収入に関する限り,現実の労働市場の実態を反映したものといえるが,就労開始までに相当な期間のある年少者の場合にこれをそのまま当てはめることは,将来の社会状況や労働環境等の変化を無視することになり,特に年少女子の交通事故被害者に対し,公平さを欠く結果になりかねない。今日では,雇用機会均等法の施行や労働基準法における女性保護規定の撤廃,男女共同参画社会基本法の施行等,女性の労働環境を取り巻く法制度がある程度整備され,それに伴い女性の職域,就労形態等が大きく変化しつつあり,現実社会において男性並みの賃金を取得している女性は決して珍しい存在ではなくなってきている。被害者が将来男性並みに働き,収入に得られる蓋然性は相当程度認められる。