<弁護士交通事故裁判例>介護費等につき定期金賠償を命ずることはできないとした事例
2017-08-23
加害者側は,介護費が一時金で認定され,認定された余命期間内に被害者が死亡した場合,死亡後の期間に相当する介護費を被害者の遺族が取得することは不合理であるが,加害者がこれを回収しようとしても,不当利得返還請求によるべきか,請求異議の訴えによるべきか明らかでないことから,少女固定後の介護費および介護雑費につき,定期金賠償方式で認容することが合理的であると主張する。確かに,定期金賠償方式によれば,実際に必要となる介護費等を過不足なく被害者に賠償することが可能となり,現実の必要性に対応する形で被害者の生活を保障できる等の利点があるが,定期金賠償方式による場合,将来の支払拒絶,支払不能に備えた履行確保の措置に配慮する必要があり,被害者が一時金による賠償を求めている場合に定期金賠償を命じることが処分権主義の観点から許されるかという問題もある。また,被害者らは,定期金賠償方式による判決を求め定期金賠償は求めない旨を明示している。以上の各事情を考慮するならば,被害者の症状固定後の介護費および介護雑費について定期金賠償を命ずることはできないというべきである。
(大阪地裁平成19年1月31日判決)
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