交通事故の解決方法と特徴
交通事故に関する法的解決には、大きく示談、裁判、交通事故紛争処理センターの利用という3つの手段があります。
それぞれにはメリットとデメリットがあるため、事案によって解決方法を選択することになります。
(1)示談
示談とは、相手方と交渉を行うことで互いが譲歩しあい、最終的には合意をすることで解決する方法です。
この合意のことを和解と言います。
①示談を利用するメリット
示談を利用する最大のメリットは、裁判に訴えるよりも早く解決できることです。
示談による交渉は相手方保険会社の担当者あるいは相手方と直接に連絡を取り合って行います。
話し合いによる交渉がスムーズに進めば、数日で解決する場合もあります。
次に、交渉の費用が要らないことです。裁判所へ訴訟を提起する際には諸費用が発生するものの、示談の場合にはそのような費用が要りません。
②示談を利用するデメリット
相手方保険会社は賠償額を抑えたいと考えているため、低い基準に基づいた賠償額を提示してくる場合が多いのが最大のデメリットです。
さらに保険会社の担当者は交渉の経験が豊富であることが多いため、個人で交渉する場合一番高い基準である裁判基準を基にした賠償額を認めてもらうことが非常に難しいのです。
示談は双方が「合意」しなければ成立したことになりません。
互いにそれぞれの主張をどの程度受け入れ、あるいは受け入れないかの折り合いをつける必要があるのです。
このため、お互いが一歩も譲らないという場合には訴訟へ移行することになります。
このような場合でも、弁護士へ相談されることで適正な賠償額での交渉と、相手方に合意してもらえるような適切な提案をすることが可能です。
(2)裁判
裁判に訴える場合、訴状を作成・提出し、それぞれが主張を陳述した後、裁判官によって判決が下されることで解決が図られます。
裁判に訴え出ることは訴訟を提起するとも言います。
①裁判を利用するメリット
裁判上で賠償額を争う場合、相手方の交渉術に阻害されることなく一番高い基準である裁判基準に基づいた賠償額を主張することができます。
第三者的立場にある裁判官が双方の主張を聞いた形で妥当と思われる判決を下すため、事故当時者にとって結論に納得がしやすくなります。
立証のしかたによっては、これまで示談では認めてもらえなかった後遺障害について認定してもらえる可能性があります。
②裁判を利用するデメリット
裁判を利用する最大のデメリットは、時間的労力を必要とすることです。
裁判で訴えるには、訴訟提起書類の準備・作成に時間や手間がかかってしまうこと、解決までには最低でも数か月、場合によっては1年以上かかってしまう場合があります。
(3)交通事故紛争処理センター
交通事故紛争処理センターは、示談と裁判のメリットを取り入れた解決方法です。
具体的には、センターに嘱託された弁護士が第三者の立場から当事者双方の主張を聞き、公平に判断を行います。
「斡旋」と「審査」という解決方法が用意されており、事案によってどちらを利用するかを選択します。
斡旋とは、嘱託弁護士が中立な立場から和解するための斡旋案を作成し、当事者がこれに合意することで解決する方法です。
審査とは、双方の主張を聞いた嘱託弁護士が裁定という結論を下すことで解決する方法です。
①交通事故紛争処理センターを利用するメリット
当事者双方の主張を弁護士が聞くという裁判のスタイルではありますが、訴訟を提起するよりも早く解決することができます。
また、センターの利用料は無料なので訴訟費用もいらず、費用を安く済ませることができます。
審査による裁定が出された場合、ほとんどの任意保険会社はその裁定に拘束されるため、示談で交渉するよりも強い解決効果を得ることができます。
②交通事故紛争処理センターを利用するデメリット
これまで認めてこられなかった、あるいは認められづらかった後遺障害の認定など、特殊な事案の解決には向いていません。
嘱託弁護士の提示する斡旋案や裁定に不満な場合は、訴訟を提起することになります。
結果として、解決にかかる時間が延びてしまうことになり、精神的負担になるおそれがあります。
以上、それぞれにメリットやデメリットがあります。
しかしできれば早期の解決を図った方が良いため、最初は示談による交渉を行うこととなる場合が多いです。
その際、弁護士へご相談いただければ妥当な賠償額による交渉を行い、かつ、相手方にも納得してもらえるような適切な提案をすることができます。
交通事故後、示談を行うことをご検討の方は、ぜひ弁護士へご相談ください。