9歳男子の死亡を目の前で目撃した母親の精神的攻撃による休業損害を認めなかった事案

2019-04-12

被害者の母親は,被害者のそばにいて共に事故に巻き込まれたのではなく,加害行為による生命・身体の侵害の危険性は母親自身に対して直接向けられたものとは断定できないから,母親の被った精神的打撃は,あくまで本件事故直後の被害者の悲惨な状態を目撃したという事実と本件事故によって被害者が死亡したという事実が介在して初めて生じるものであるということは否定できない。従って,母親は,本件事故の直接被害者とは認められないし,母親の被った損害は,本件事故により直接生じたものとはいえず,本質的に二次的,間接的なものであるというべきである。関接被害者であっても,本来は直接被害者が加害者に対して請求することができる損害を近親者が代わりにしたことによって生じた損害と評価を得るような場合には,当該近親者に対しても不法行為が成立する余地があると解かされる。しかし,母親の休業損害は被害者の損害を肩代わりすることによって生じたものでないことは明らかであるので,本件の母親の被った精神的打撃について,民法711条に基づく近親者固有の慰謝料の額を算定するに当たって,これを斟酌するほかはない。