<弁護士交通事故裁判例>相続税は本件事故による損害とはいえないとした事例

2017-07-06

相続により財産を取得した者は,取得した財産の価額を基礎として計算した所定の額について相続税の支払義務を負う。そして,相続税の額は,相続により取得した積極財産の価額から債務等を控除して得た額に所定の率を乗ずることによって算定される。交通事故のように,第三者の不法行為が原因となって,相続が発生したような場合であっても全く同様であり,相続人は,相続が発生した結果,相続財産を取得し,その額から債務等を控除して,なお,残余額がある場合にはこれに所定の率を乗じて得られる相続税額を負担することになる。右のとおり,相続税の支払義務は,相続によって財産を取得したことを前提とするものであるから,財産の取得という側面を全く考慮することなく,支払義務の側面のみをとられて,交通事故によって死亡した者の相続人が負担する相続税を,交通事故によって相続人に生じた損害と解することは相当でない。

(東京地裁平成9年1月30日判決)