Archive for the ‘未分類’ Category

後遺障害固定後に死亡した被害者の逸失利益の算定に当たり,死亡の事実を考慮しないとした事例(H8.5.31最判)

2021-08-31

交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した場合における財産上の損害の額を算定するに当たっては,その後に被害者が死亡したとしても,交通事故の時点でその死亡の原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り死亡の事実は就労可能期間の算定上考慮すべきではないと解するのが相当である。このように解すべきことは,被害者の死亡が病気,事故,自殺,天災等のいかなる負担すべき第三者が存在するかどうか,交通事故と死亡との間に相当因果関係ないし条件関係が存在するかどうかといった事情によって異なるものではない。
 また,交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害のために労働能力の一部を喪失した後に死亡した場合,労働能力の一部喪失による財産上の損害の額の算定に当たっては,交通事故と被害者の死亡との間に相当因果関係があって死亡による損害の賠償をも請求できる場合に限り,死亡後の生活費を控除することができると解するのが相当である。けだし,交通事故と死亡との間に相当因果関係が認められない場合には,被害者が死亡により生活費の支出を必要としなくなったことは損害の原因と同一原因により生じたものということができず,両者は損益相殺の法理またはその類推適用により控除すべき損失と利得の関係にないからである。

女子の両下肢の醜状痕につき,後遺障害の12級相当と認め,固定後10年間は20%,その後は9%の労働能力喪失を認めた事例(H6.5.23大阪地判)

2021-08-23

両下肢の醜状痕については,自賠実務上および労災実務上,両大腿のほとんど全域の醜状痕については,12級相当とされているところ,大腿部醜状痕の数は多く,それぞれも大きく,ケロイド状となっており目立ち易いこと,下腿にも少なからず存在すること等の事情からすれば,上記場合に相当する醜状痕であるとはいえ,12級相当と判断すべきである。左下肢短縮については,当事者間に争いがない。その余の各障害は,等級認定に至らない。

右大腿部切断後に公務員として勤務していた被害者について,67歳まで60%の労働能力喪失を認めた事例(H5.7.30浦和地判)

2021-08-16

被害者のガス壊疽発症の主要な原因は,当初の治療を担当した医師の不完全な創傷処理にあったこと,そして,右大腿部切断は医師が早期発見とその後の対応を怠ったことによるものと認められ,したがって,医師の治療行為と被害者の右大腿部切断の後遺障害との間には相当因果関係が認められるとして,医師の過失を肯定。

1級の症状固定時16歳男子の逸失利益について,加害者側主張の生活費控除を認めなかった事例(H21.11.17)

2021-08-10

加害者側は,遷延性意識障害の場合は就労不能であることが明らかであるから,一定程度の生活費控除を行うことが合理的であると主張する。しかしながら,被害者の食事内容は材料としては通常の食事と変わらず,また食材費以外にも,炊事,洗濯および空調をはじめとする生活一般において一定程度の電気,ガス,上下水道代を要することは想像に難くなく,さらにガソリン代や被服費等を要するであろうことも考慮に入れると,被害者が遷延性意識障害であるからといって,直ちに生活費控除を行うことが相当とまでは言い難い。

嗅覚脱失につき後遺障害等級12級12号を類推し,併せて抗てんかん剤を継続的に投与されている被害者につき,併合して後遺障害等級11級程度に該当することを認めた事例(H10.5.21水戸地判)

2021-08-02

被害者は本件障害により嗅覚を脱失したが,これは後遺障害等級別表12級12号を類推し,同級に該当するものと認めるのが相当である。そして,被害者には外傷性脳波異常がみられ,てんかんへの移行防止のため抗てんかん剤が継続的に投与され,経過観察中である。てんかん発症の懸念が続く限り,ある程度従事する職業が制約されると考えられるので,嗅覚脱失と併合して後遺障害等級11級程度に該当すると認めるのが相当である(ただし,てんかん症に移行し,精神障害が生じた場合は別問題であろう)。さらに被害者には,本件障害により後頭部に大きさ約2.7cmX約1.5cmの頭髪欠損が存するが,労働能力に影響は認められない(慰謝料の算定に当たり斟酌するのは別問題である)。

後遺障害1級の女子小学1年生の後遺障害逸失利益算定に当たり,賃金センサスの男女計・学歴計・全年齢平均賃金を基礎収入額とし,生活費控除を認めなかった事例(H28.2.25東京地判)

2021-07-27

被害者は症状固定時7歳であることから,H24賃金センサスの男女計学歴計全年齢平均賃金を基礎収入とするのが相当であることが認められる。年少者は多様な就労可能性を有することに加え,近時の男女共同参画の取組みの動向,男女間の賃金格差の推移に照らすと,現在の労働市場における男女間の賃金格差を直ちに被害者の逸失利益の算定に反映させるのは相当ではない。本件では,賃金センサス男女計学歴計全年齢平均賃金を基礎として被害者の逸失利益を算定するのが相当である。加害者らは,逸失利益の算定に当たり,生活費として2割程度控除すべきである旨の主張もするが,被害者に1級相当の後遺障害が残り,常時介護を要することを考慮しても,これにより生活費の支出を一部免れたなどということはできない。

12級相当の醜状痕が残った症状固定時12歳女子の逸失利益について67歳まで喪失率5%で認めた事例(H24.11.27名古屋地判)

2021-07-19

顔面の線状痕ないし陥没痕はその長さが5cm以上のものと捉えることはできず,女子の外貌に醜状を残すものとして12級に相当する。被害者の醜状の内容,程度および症状固定時12歳の女子であることから,今後の進路ないし職業の選択,就業等において,不利益な扱いを受ける蓋然性は否定できず,醜状痕を気にして消極的になる可能性をも考慮。

年少女子未就労者の逸失利益につき全年齢の全労働者平均賃金を基礎として算定した事例(H14.5.31大阪地判)

2021-07-12

被害者は,症状固定時は7歳で小学校2年生の女子である。同人は,後遺障害を残し,H11.4.19に症状が固定した。H11賃金センサスの男子労働者平均賃金は¥5,623,900-,同女子労働者平均賃金は¥3,453,500-である。賃金センサスは現在就労する労働者の収入に関する限り,現実の労働市場の実態を反映したものといえるが,就労開始までに相当な期間のある年少者の場合にこれをそのまま当てはめることは,将来の社会状況や労働環境等の変化を無視することになり,特に年少女子の交通事故被害者に対し,公平さを欠く結果になりかねない。今日では,雇用機会均等法の施行や労働基準法における女性保護規定の撤廃,男女共同参画社会基本法の施行等,女性の労働環境を取り巻く法制度がある程度整備され,それに伴い女性の職域,就労形態等が大きく変化しつつあり,現実社会において男性並みの賃金を取得している女性は決して珍しい存在ではなくなってきている。被害者が将来男性並みに働き,収入に得られる蓋然性は相当程度認められる。

男子小学生の後遺障害(併合4級該当)による逸失利益算定に当たり92%の労働能力喪失を認めた事例(H6.1.18東京地判)

2021-07-05

被害者は,本件事故以前は健康で学業成績も優秀な男子小学生であったが,本件事故により,前記認定の後遺障害を残す結果となり,その内容,その程度に照らすと,辛うじて日常生活は営むことができるとはいうものの,精神的側面からしても,また,言語能力を含む知的側面からしても,将来,いずれ労務に服するにしても著しい制約を受けるであろうことは明らかであり,自賠責保険においても,併合4級の認定を受けている。また,抗けいれん剤の服用により,白血球が減少したこと,人工骨への感染の可能性があることなど,将来,なお治療を余儀なくされる不安をかかえており,この点も労働の制約となるといえる。

この命を大切に

2020-04-27

今,新型コロナウイルス感染症の脅威により,市民の生命と健康が脅かされています。
さらに,外出自粛要請や休業要請などにより,市民生活は逼迫し,失業も急増しています。
医療従事者の方々におかれては,感染の危険に身をさらして医療崩壊寸前の状況で昼夜奮闘されておられます。
このような窮状を目の前にして,私たち弁護士にできること・・・。
それは,市民の皆様の司法アクセス(法的な救済の道)を閉ざさないことだと考えています。
どうか希望を失わないでください。
私たち人類には,あらゆるウイルスや疫病との闘いを乗り越えてきた長い歴史があります。
その歴史の延長線上にいる私たちに,今回の危機を乗り越えられないはずはありません。
私たち1人1人が,人類の祖先たちが生き抜いてきた類いまれなる命を受け継いできたのです。
生きたくても叶わない命がある中で,自らのこの命を大切にしてください。
いつの日か,光は必ず見えてきます。

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