<弁護士交通事故裁判例>自宅改造費のうち5分の1を損害と認めた事例
2017-03-01
家屋改造費:813万8500円
被害者が自宅において車椅子での生活を可能にするため、隣地を1069万2500円で購入したうえ、自宅を二階建てとする等の増改築を行い、家屋改造費として3000万を支出したことが認められる。この点につき加害者は、被害者の生活空間を寝室・トイレ・風呂を中心に車椅子での移動を想定し、家族用の玄関とは別に被害者のためのスロープを設置するとともに既存建物の和室を改造してケアビリシステムを導入した場合の費用は、456万7500円で足りる旨、また、既存建物の和室および主寝室を改造した場合の費用は673万500円で足りる旨を主張し、これに沿う証拠もある。確かに被害者が日常生活を行うことに限定すれば右の設備で医学的に必要とされる範囲であるということもできる。しかし、家族との交流、社会参加のためにも玄関は家族と共有のものにし、各部屋との往来を容易にする改造が望ましく、バリアフリーの理念が一般化しつつある現在の社会情勢の下では、加害者主張の工事ではこれらの目的を実現するに足りないというべきである。もっとも、加害者主張の家屋改造によっても被害者の医学的に必要とされる範囲の改造は実現されること、被害者らの行った家屋改造においては資産価値を有する隣地の購入費用が含まれるほか、家族の利便に供する部分も大きいこと等を考慮すると、被害者らの支出した家屋改造費等のうち加害者に負担させるべき金額はその5分の1とするのが相当である。
(名古屋地裁平成11年7月19日判決)
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