<弁護士交通事故裁判例>人損のない治療費を損害と認めた事例
2016-09-15
被害者が被害車両に同乗していたことは認められるが,同人が本件事故で受傷したり,何等かの精神症状を生じたとは認められず,人的損害が生じたとは認められない。しかし,事故に遭遇した者が,事故後に受傷がなかったことが判明した場合であっても,事故直後において事故による何らかの異常が生じていないかを検査することは社会通念上相当なものであり,特にそれが幼児・児童である場合にはなおさらその必要性は高いと認められる。したがって,このような場合における診療・検査の費用については,それが金額の大小やその算出過程,診察回数等に照らして社会通念上相当といえる範囲に収まっている限り,事故と相当因果関係のある損害として認めるのが相当である。証拠によれば,通院が行われたのは事故から2か月半後であり,事故直後と必ずしもいえるわけではなく,その意味で本件事故との相当因果関係に疑問がないわけではない。しかし,通院が1回にとどまり,費用も少額であること,被害者が当時5歳の児童であったことを考慮すると,その金額・内容が社会通念を逸脱しているとまではいえず,本件事故との因果関係を否定することはできない。
(大阪地裁平成26年8月26日判決)
←「<弁護士交通事故裁判例>低髄液圧症候群の治療費を損害と認めた事例」前の記事へ 次の記事へ「<弁護士交通事故裁判例>整骨院での施術費を損害と認めた事例」→